近年耳にするようになった「STEM教育」。
あなたはこの言葉の意味を知っていますか?
実はSTEM教育は、これからの時代になくてはならないものと言われています。
今回はSTEM教育の言葉の意味だけでなく、今なぜSTEM教育が大切と言われているのか、
その背景についても解説していきます。

STEM教育とは?

STEM教育の「STEM」とは、
Science(科学)Technology(技術)Engineering(工学)Mathematics(数学)
の頭文字をとった言葉です。
つまりSTEM教育とは、科学・技術・工学・数学の4つの教育を総称した言葉なのです。
しかしこれだけを説明しても分かりにくいと思います。
次の項目からはSTEM教育の目的について解説していきます。
STEM教育の目的は総合的な学び

STEM教育は、科学・技術・工学・数学を総合的に学ぶことを目的としています。
これを聞くと「自分のこどもは理系には進まないかもしれないし……」と思うママもいるでしょう。
しかし近年は、将来どのような職業に就くにしてもこれら4つの基本的な知識は持つべきと言われています。
その理由としては、これから来る超少子高齢化社会が関係しています。
働き手が少なくなる中で、ますます社会にはIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)が導入され、今ある仕事も機械化されていきます。
このこと考えると、ITやそのベースとなるSTEMの分野を学んで損はないのです。
しかもSTEM教育はただ単純にこれら理数系の学力を上げる目的だけで行われるわけではありません。
仕事でプロジェクトを進めるための計画性や論理的思考力、問題解決力を養うためにも重要と言えるのです。
次の項目では、オーストラリアの小学校で実際に行われているSTEM教育の授業について見ていきましょう。
オーストラリアの小学校で行われるSTEM教育

今回はEdTechZineの記事を参考にしました。
こちらの記事では、「日本STEM教育学会 設立記念シンポジウム」の内容が紹介されています。
このシンポジウムでは、オーストラリアの小学校のSTEM教育の一環、「キッチンプロジェクト」について言及されていました。
キッチンプロジェクトでは作物を育てる畑から耕し、育て、収穫し、調理するまでを生徒たちが行うのだそうです。
以下、記事からの引用です。
自分たちで畑を作って作物を育てるには、単に農業や植物の知識だけでなく、耕作地をどのような形にするか、広さはどれくらい必要か、どんな手入れが必要か、水や電気をどう調達するか、といったことを論理的に考えて計画し、実装に落とし込むエンジニアリングが欠かせない。料理のレシピはそのままプログラミング教育にもつながる。
このように、ある課題に取り組む際、
「達成するにはどのような問題があって、
どうクリアしていかなければならないか?」
そこから考えるのがSTEM教育の特徴です。
算数、理科、といった一つ一つのカリキュラムで句切って学ぶのではなく、
あらゆる分野を合わせて問題解決に導くのです。
「まずは体験してみて、そこから知識を得る」。
これからの教育は、このような形にシフトしていくのかもしれません。
また、このようなSTEMカリキュラムでは、
チームで課題を出し合い、その中で自分の役割を見つけ出すのも必要となります。
このようなチームで意見を出し合ったり、チームの一員として何をすべきか考える力は、
将来理工系の仕事に就かなくても、必要不可欠なものだと言えます。
STEM教育は少子高齢化社会に必須?

STEM教育では、まずは体験を通して学ぶことや、
チームで課題を見つけ、課題を解決するための計画を練り、
失敗と成功を繰り返して学ぶことを重要視しています。
このような学びは、これからの少子高齢化社会で必要不可欠な力となるのではないでしょうか。
ここからは私が考える、
少子高齢化に伴う働き方の変化と、STEM教育で養うスキルについて述べていきます。
日本の就業者人口はますます減少

少子高齢化が進む日本では、就業者人口の減少が深刻化しています。
具体的な数字にすると、2030年には就業者人口が821万人減少するというデータも出ています。(厚生労働省 人口減少の見通しとその影響)
就業者人口が減少した日本の社会はどうなる?

もし就業者人口が予想された通りに減少すれば、日本の社会はどうなるのでしょうか。
実際にこのような人手不足を解決するために、IT化による作業の効率化やAIの導入が進んでいるのです。
しかしこのようなIT技術に関わる人材の不足も深刻な状況です。
もし機械化がうまく進まなかった場合、人手不足を補うため、
一人の人が複数の企業に所属して働く形が普通になるかもしれません。
機械化が進んだ場合人は何をするべき?

もし仕事の機械化が進んだ場合、例えば簡単な事務作業など、単純作業は人がやる必要がなくなっていくでしょう。
では逆に「人だからこそできる仕事」とはどのようなものなのでしょうか?
それを考える上で、私は以下の本を参考にしました。
AIはこれまでの膨大なデータから予想される結果を導き出すことができます。
一方でデータがない、今まで経験がないところから何かを生み出すことは今のところできません。
つまりこのような0→1を生み出すような、クリエイティブな部分を人が担うようになるのではないでしょうか。
誰でもできることではなく、自分だからこそできるものを見つけられたり、
チームの中でも自分の役割を見つけ、全体の成功に向けてステップを組み立てたりする力が、
これからの社会を生き抜くスキルになると言えます。
STEM教育は働き方の多様化や機械化に対応する力を養うもの

もし将来的に人手不足を養うため、人ひとりが複数の集団に属して仕事をしなければならなくなった場合、
それぞれの企業で目指すべき目標に向かって自分の役割を見出す必要があります。
目的を達成するために生かせる自分のスキルを見出し、それぞれのチームで課題解決する力が必須と言えます。
また前述したように機械化が進むと、人は創造性が高い仕事を担うことになります。
0からアイディアを生み出したり、それを形にするためのステップを組み立てる思考力、想像力が必要となるでしょう。
さらに、実際にプロジェクトを動かしたときの問題解決力も必要です。
つまりこれからの時代を生き抜くためには、IoTやAIを使いこなす基本的なIT力とともに、
創造力や思考力、ロジカルシンキングや問題解決力を養う必要があると考えられます。
これらの点は、まさにSTEM教育によって養えるのです。
一人ひとりの個性を伸ばす教育が求められている

チームとして課題に取り組むとき、メンバー皆が同じような能力をもつだけだと、全体の力はつかないですよね。
一人ひとりの個性やスキルがあってこそ、プロジェクトを優位に進められるのではないでしょうか。
このような観点からも、これからは画一的な学力だけでなく、個性を伸ばす教育も必要になるのかもしれません。
就労人口減少はIT分野でも深刻な状況

前述したような就業人口減少に対応するため、企業でもICT(情報技術)活用がすすめられています。
これはITの力で仕事を効率化させる動きと言えます。
しかしそもそもこのIT業界でも人材不足が深刻なのが現状です。
STEM教育推進で導入されるプログラミング教育

STEM教育の一環として代表的なのがプログラミングです。
プログラミングでも論理的思考力や問題解決力が必要となります。
STEMおよびIT人材育成のため、日本でも2020年から小学校でのプログラミング教育がスタートします。

STEM教育とプログラミングの関係

プログラミングは、コンピューターを人の意思のとおりに動かすために行うものです。
例えば、
- 課題をクリアするためのアイディアを出し
- それを実現するためのプログラムを考え
- プログラムを動かしてみて出てきた課題をクリアするためにプログラムを練り直す
これを繰り返すのがプログラミングと言えます。

例えばロボットプログラミングの課題で、
「自動的に水やりをするロボットを作りたい」というアイディアを思い浮かべるとします。
このロボットを実現させるためには、以下のような課題が出てくるでしょう。
- どんなロボットを設計する?
- ロボットをどう組み立てる?
- 水やりのタイミングはどうプログラムする?(時間?土の湿度?)
- 実際に動かしてみてどのような問題が生じた?(まだ土が乾いていないのに水やりが行われてしまったなど)
- その問題をクリアするためにはプログラムのどこをどう直せばいい?
などなど……
まずアイディアを出し、実現するためのステップを組み立て、実行した後に出てきた課題をまたクリアしていく。
このようなステップを踏むことで、物事をロジカル(論理的)に考え、問題に立ち向かう力を養えるでしょう。
STEM教育も学問としての知識だけでなく、4つの分野を組み合わせた総合的な学びが目的とされています。
プログラミングでも工学や数学の知識が身に付きますが、このような問題解決力が身に付けられるのが特徴と言えます。

プログラミングトイなどのSTEM教育ツール

「STEM教育」と言うと難しく聞こえますが、
近年は家庭でも取り入れられるSTEM教育ツールが増えてきています。
例えば小学生のSTEM教育として有効とされるのがロボットプログラミングです。
プログラムを組んで実際にモノを動かせるため、小学生でも理解しやすいです。
プログラミングの他には、科学分野に触れることもSTEM教育につながります。
例えば自由研究で理科実験にトライすることもSTEM教育の導入としておすすめでしょう。
夏休みの自由研究向けのワークショップやサイエンススクールに通ってみるのも、
STEM分野に触れるいい機会です。
また子供が楽しめるおもちゃの中でも「STEMトイ」というカテゴリがあります。
STEMトイは楽しみながら論理的思考力を養えるよう工夫されたおもちゃです。
次の項目からは家庭でも取り入れられるSTEMトイを紹介します。
家庭にも取り入れられるSTEM教育ツール

今回は家庭でもできるおすすめのSTEM教育として、前述したSTEMトイから4つのアイテムを紹介します。
小学生低学年からできるものがあるので、この機会に取り入れてみてはいかがでしょうか。
mBot

mBotはMakeBlock社のSTEM教育用ロボットです。
子供でも簡単に組み立てられ、組み立てたあとはタブレットを使ったプログラミングができます。
mBotを動かすためのプログラムは、mBlockというスクラッチベースのビジュアルプログラミングで設計します。

ブロックを組み立てるようにプログラムできるので、初心者でも感覚的に理解できるでしょう。
ビジュアルプログラミング言語「スクラッチ」については、以下の記事を参考にしてくださいね。

キュベット

キュベットは3歳から始められるプログラミングトイです。STEM教育ツールとしては珍しい木製のおもちゃで、木のぬくもりが感じられます。
コーディング用ブロックをつなぎ合わせて簡単にプログラミングできますよ。キュートな見た目でママもきっと癒されるでしょう。

レゴ ブースト

レゴ ブーストは7~12歳向けのプログラミングブロックセットです。ロボットや子猫、ギターなど、5タイプが組み立てられます。
組み立てたブロックはレゴブーストアプリを使ってプログラミングできます。イラストで組み立てられるビジュアルプログラミングなので、初心者でも気軽にチャレンジできるでしょう。

micro:bit

micro:bitは、イギリスで開発されたミニコンピューターです。
25個のLEDやスイッチなどが備わっており、パソコンにつないで、プログラミングできます。
プログラムで使用できる言語は、JavaScript(多くのwebサービスで用いられる言語)とPython(データ解析に用いられる言語)です。
JavaScriptブロックエディタはビジュアルプログラミングなので、小学生でも理解できる内容です。
例えば、micro:bit上のLEDで文字を表すようなプログラムを組めます。
解説書籍もありますので、合わせて参考にしてくださいね。

STEM教育から発展した言葉〜STEAM・STREAM〜

近年はSTEM教育から新たな言葉が生まれています。例えば以下の2つの言葉です。
- STEAM:STEM+Art(芸術)
- STREAM:STEAM+Robotics(ロボット工学)
Art(芸術)が重要視される意味

今後はAIが発達して単純作業は機械化されていくと言われています。
しかし現状、AIは何もないところから新たなものを生み出すことはむずかしいとされています。
つまり0→1が生み出せるのは人間の創造力や感性によるもの。
それらを高めるには、芸術分野の教育が重要だと言われているのです。
AIの得意分野と不得意分野については、以下の本でも書いてあります。
何となくAIに仕事を奪われると思っている人はぜひ読んでもらいたいです。
また以下の書籍ではSTEAMについて解説されています。
参照:家庭で身につけさせるべき、「佇まい」とは?ー落合陽一さんが語る、AI時代の子育て論
STEM教育はこれからの時代を生き抜く力を養う

STEM教育はIT化が進むこれからの時代を生き抜くために必要不可欠な教育と言えます。
またIT人材不足を解消するためにもSTEM教育は必要です。
今の子供たちが文系理系どちらに進むか関係なく、基本的なITスキルは必須な時代が来るでしょう。
STEM教育では問題解決力やロジカルシンキングなど、あらゆる職業で必要となる力がつきます。またSTEM教育はおもちゃ(STEMトイ)など活用すれば、家庭でも取り入れられます。
今回紹介したSTEM教育ツールで、ぜひあなたもお子さんの可能性を広げてあげてください。

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