この記事では、2020年度からのセンター試験はどう変わるのか? 英語が大きく変わるって本当? 数学や国語で記述式が始まるの? といった疑問について解説します!
この記事はこんな疑問を持つ人におすすめ
・センター試験が結局どう変わるのかわからない
・「記述式になるって聞いたけど本当?」
・センター試験が変わるなら塾選びも変えるべき?
・英語試験が特に変わるって聞いたけど、これからはなにをどう学べばいいの?
先日の1/18(土)19(日)に、2019年度のセンター試験が終了しましたね。
なんてのんびり考えていたのですが、来年度(2020年度)からセンター試験が「大学入学共通テスト」に変わるんですよね。
そう。文部科学省が進める大学入試改革の一環として、2020年度の大学入学共通テスト(センター試験)から、その出題傾向や採点方式が変わると言われていました。
しかし、結局見送りに…
という人のために、
「結局センター試験はどう変わるの?変わらないの?」
「変わるって言われてた部分はどうなるの?」
というところを、この記事では解説します。
2020年度以降、センター試験は「大学入学共通テスト」に
冒頭で解説した通り、2020年度からセンター試験は「大学入学共通テスト」に生まれ変わります。
「大学入学共通テスト」の初回実施は2021年1月16日(土)・17日(日)。この実施タイミングは従来と同様です。
※2020年10月追記情報
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、学業の遅れが在学する学校長に認められた者に対して、追試験が1月30日(土)・31日(日)に実施されることになりました。
さて、ここからが「変わるのか?結局変わらないのか?」と疑問の声が挙がる部分の話。
当初、2020年度実施の大学入学共通テストから、以下のような点の導入が検討されてきました。
2020年度の大学入学共通テストで導入検討されていたもの
・英語民間試験(英検やGTECなど)の成績採用
・数学・国語の記述式問題採用
しかし英語民間試験の成績採用に関しては、2019年11月に2020年度の実施見送りが発表。
参照:英語民間試験の20年度実施見送り 文科相が表明
そして2019年12月、数学・国語の記述式問題採用に関しても2020年度の大学入学共通テストでは実施が見送られました。
2021年度の大学入学共通テストの変更点は、2020年1月中をめどに公表するとされています。
参考:【入試改革】記述式見送りの共通テスト 今月に変更点公表
2020年度以降、センター試験は具体的にどう変わる予定だったのか
では、当初予定されていた2020年度以降の大学入学共通テスト(センター試験)は、どのようなものだったのでしょうか。
結局2020年度からの実施は見送られた形となりましたが、ここでどう変わる予定だったのかをおさらいしておきましょう。
全体として変更しない部分と2020年度からの変更を目指していた部分
まず初めに、変更しない部分と変更する予定だった部分を整理します。
変更なし | ・実施時期 →従来通り1月の中下旬の2日間で実施 ・出題教科・科目 →6教科30科目 |
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変更あり | ・全体としての問題の傾向 →より思考力・判断力・表現力を活用して解く問題に ・各教科・科目の評価方法 →大学へは点数のほか9段階評価が提供(これが出願資格に影響を与えるかどうかは不明) ・大学入試センターから大学への成績提供のタイミング →現行よりも1週間程度あとに |
変更しない部分は、実施のタイミングと出題教科・科目です。出題される6教科30科目については、大学入試センターのこちらの資料を参考にしてください。
2020年度から変わる予定だったのは出題傾向と評価方法
一方で変更点としては大きく以下の二つが予定されていました。
2020年度大学入学共通テストから大きく変わる予定だったポイント
・出題傾向
・評価方法
まず出題傾向については後ほど詳述しますが、全体として「思考力・判断力・表現力」が求められる予定でした。
例えば数学・国語では記述式の導入、英語のリスニング配点の変更などがこれに当たりますね。
教科ごとに予定されていた具体的な変更点
では教科ごとに変更が予定されていた部分を詳しく見ていきましょう。
数学 | ・数学①で記述式を導入 ・マークシート式と記述式を混在 ・数式を記述する小問3問が出題 ・記述式問題の配点はマークシート式と合わせて100点 ・試験時間は現行+10分の計70分に |
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国語 | ・記述式を導入 ・マークシートとは別の大問で出題 ・記述式問題は点数の評価ではない ・小問が5段階で評価(a・a*・b・b*・c)、各小問の解答状況で大問が5段階で評価(A~E)される ・記述式の回答字数は最大80〜120字程度 ・マークシート式問題は現行同様計200点の配点 ・試験時間は現行+20分の計100分に |
英語 | ・記述式を導入 ・現行の「筆記」→「リーディング」へ名称変更 ・配点は現行の200点から100点に ・リスニングの配点が現行の50点から100点に(リーディングと同配点) ・リーディングでは現行の筆記に合ったような発音・アクセント・語句整序といった単独問題はなくなる ・リスニングは1回読みも(現行センター試験は全て2回読み) |
理科 | 理科②で選択問題がなくなる |
その他 | 記述式の採点は民間企業を活用 |
表を見るとわかるように、大きく変わる予定だったのは数学と国語の記述式問題導入と、英語試験全体です。
またこのほかにも、前述したように英語民間試験の成績採用も検討されていました。
2020年度以降にセンター試験の英語はこう変わる予定だった
2020年度実施試験からもっとも大きく変わる予定だったのは英語です。
ここでさらに詳しく解説し、文科省が目指す大学入試改革を紐解きましょう。
英語民間試験(英検やGTECなど)の成績採用
「読む・聞く・書く・話す」の4技能をはかるため、英語民間試験の成績採用導入が検討されていました。
近年のグローバル化に対応する「生きた英語」を身につけるためには、これら4技能がバランスよく求められるためでしょう。
英語民間試験の成績採用はなぜ見送られた?
ではなぜ英語民間試験の成績採用は見送られたのでしょうか。その要因には以下の3つが挙がります。
英語民間試験の成績採用見送りの背景
・公平性の問題
・受験可能性の問題
・試験の質の問題
公平性の問題
英語民間試験は高額なものですと1回あたり2万円を超えるものもあります。その中で成績を活用できるのは2回分。そのため「何度も受けられる裕福な家庭が有利になるのでは?」といった声が挙がっていました。
受験可能性の問題
センター試験の英語は毎年50万人以上の受験があります。「それほどの受験者が受験できる会場の確保ができるのか?」といった疑問の声がありました。
試験内容や評価方法の問題
各回の試験の難易度の公平性の問題があります。内容が異なる各回の試験の成績をランクで比較することへの疑問の声もありました。
4技能をいかに伸ばせるかがカギ
これまでのセンター試験は筆記とリスニングの「読む力」「聴く力」をはかるものでした。しかしこれにさらに「話す力」「書く力」を加えた4技能を大学入学共通テスト測るため、英語民間試験の成績採用は検討されていました。
そしてこの改革の方向性はいまでも変わっていません。
2019年11月の萩生田光一文部科学相の会見によると、2025年度実施を目処に「新たな英語試験を導入する」と発言しています。
ですからこの2025年度の実施を目指す「新たな英語試験開始」に対応するためには、「話す」「書く」も重視した英語学習をする必要があるでしょう。
2020年度以降の大学入学共通テストに導入予定だった記述式問題
続いては数学①と国語で導入予定だった記述式問題についてです。
こちらも見送りになったわけですが、その理由には採点に関する懸念が挙がります。
記述式問題導入はなぜ見送られたのか?
2020年度実施の大学入学共通テストの記述式問題導入が見送られた理由としては、以下のような点が挙がります。
記述式問題導入見送りの背景
・採点者の研修が充分でない
・厳正な採点が困難
・受験生の大学選択に支障が出る
採点者の研修が充分でない
2020年度実施の大学入学共通テスト採点者の選抜は2020年秋以降に実施される予定。そこから「2021年度実施のテストに間に合わせるのが困難」と判断されたのが見送りの理由として挙がりました。
厳正な採点が困難
記述式を導入すると採点部分が増え、採点ミスをゼロにすることが難しくなります。この対策として当初マークシート式と記述式を分けて実施されることも検討されましたが、実施を数ヶ月前倒すことに対する反対の声が強くなり、見送られることになりました。
受験生の大学選択に支障が出る
記述式の採点結果が不明確で、受験者の自己採点と実際の採点結果との解離が起こる可能性があります。
理解度が求められる時代に
2020年度からの記述式実施は見送られましたが、これからの大学入学共通テストの問題の出題傾向としては、知識の量よりも質や理解度が求められることは間違いないでしょう。
また知識をインプットするだけでなく、その知識を「社会の中でどう活かすか?」といった視点も大切になります。
そのためには日々の生活の中で「課題を発見する力」や、それを「解決する方法を導き出す力」も求められるでしょう。
「2020年度のセンター試験は結局どう変わる?」まとめ
ここで一旦、「結局2020年度のセンター試験はどう変わるの!?」の部分をまとめておきます。
2020年度のセンター試験で変わるところ
・名称が変わる
→センター試験から「大学入学共通テスト」へ
・出題内容が変わる
→出題方法を工夫してより思考力や判断力が求められるように
となりそうですが。それで終わるのはもったいない!
そもそもなぜ、文科省はこのような大学入試改革を進めようとしているのでしょうか?
次の項目から解説しましょう。
なぜ大学入試の改革が進められているのか?
結局は見送りになったわけですが、なぜこのような大学入試改革が進められているのでしょか?大きく以下の2つのポイントで解説します。
大学入試改革が進められる背景
・現代は「先の見えない時代」
・知識量だけでなく活かす力が求められる
現代は「先の見えない時代」
こんな言葉を聞いたことがありませんか?
2011年度にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう
出典:What’s Your Major? Working Toward the Uninvented Job
これはニューヨーク市立大学教授 キャシー・デビットソン氏の発言。
現にいまある職業の中でも、10年前にはあまり耳にしたことがなかったものがあります。
参照:平成の30年間で「消えた24の仕事」「新たに生まれた25の仕事」 〈dot.〉
このように新たな職業が次々出てくるということは、逆に消えゆく職業もあるということ。
つまり私たちの子供が大人になる頃も、今は当たり前のようにある仕事が消え、想像もつかなかったような職業に溢れている可能性が高いのです。
知識量だけでなく活かす力が求められる
ではそのような「先行きの見えない社会」にはどのような力が求められるのでしょうか。それは以下のようなものだと考えられます。
先行きの見えない社会で求められる力
・課題を自ら発見する力
・他者と協力して課題を解決する力
文科省では以上を踏まえ、大学入試改革の方向性として以下の「学力の三要素」を挙げています。
文科省が掲げる「学力の三要素」
1. 知識・技能
2. 知識・技能を基にした思考力・判断力・表現力
3. 主体性・多様性・協働性
参照:高大接続改革の動向について|文部科学省 高大接続改革PT
大学入学共通テストにも対応できる「未来型スキル」を養うには
先述したような「学力の三要素」を養うためには、従来の「詰め込み型学習」のみでは対応できないでしょう。
では得た知識から「考える力」や「社会で活用する力」を養うにはどうしたらいいのでしょうか。
自由に表現する場をつくる
もちろん基礎学力を身に付けるのは大事ですが、これからは「子供が自ら考え表現する機会」を大切にしていきたいところ。
例えば習い事であれば「絵画教室」「ダンス教室」なども表現の場として考えられるでしょう。
コミュニケーションの機会を増やす
「協働性」という部分も大切にしたいところです。
知識は豊富でも、それを社会に活かせないと困るでしょう。知識を活かすためには、社会の人々が「何を求めているのか」「何に困っているのか」を推しはかる力が必要です。
ですから家庭内だけでなく同年代・異年代の子と触れ合う機会を大切にし、コミュニケーションの中で他者の気持ちを推しはかるチャンスを与えたいものです。
「なぜ?なに?」の気持ちを大切にする
忙しいとついおざなりにしてしまう、子供からの「なぜ?なに」といった声。
しかしこのような疑問が出た時こそ、子供の主体性や思考力を養うタイミングでしょう。
そのような疑問に真摯に答えていけば、お子さんの知的好奇心を養うだけでなく、自ら疑問や課題を見つける力を身につけることも可能でしょう。
これからの学びは「主体的に考える」がキーワード
2020年度実施の大学入学共通テストの変更点は今月中(2020年1月中)に公表される予定です。
当初予定されていた大きな変更は見送られましたが、その背景には「先の見えない社会への適応力を養う目的」があります。
このことを理解すれば、これからは「従来の詰め込み型学習からの脱却」や、「より主体的に考える力」が求められていることがわかるでしょう。
現在小学生のお子さんをお持ちのパパ・ママにとって、大学入学共通テストはまだ先の話かもしれません。
しかしこれからの未来型スキルを養うためには、「主体性」「思考力」などを育む機会を、お子さんに与えていきたいものですね。